仮想通貨の取引所取引の特徴は、利用者同士の取引であることです。そのため、FXのようにスプレッドが常に同じくらいの水準になるとは限りません。
成行注文を出した場合にどの価格で約定できるかは、「板」というものを見て判断することになります。
では、さっそく仮想通貨の板を見てみましょう。

Binance(バイナンス)のBTCUSDTのチャートです。
右上の赤字の部分を売り板、真ん中の緑字の部分を買い板と呼びます。売り板には「指値の売り注文が入っている価格帯とその注文数量」が、買い板には「指値の買い注文が入っている価格帯とその注文数量」が表示されています。
板の部分を拡大して見てみましょう。

右側が指値注文の価格、真ん中が取引量です。例えば、「32261.17」のレートに「0.601192」の取引量が表示されていたら、「32261.17」のレートに入っている売り指値注文の合計が「0.601192BTC(1BTC=350万円のときで約210万円)」ということになります。
具体的な約定の仕組みは、マイナーペアのFTMUSDTのチャートで説明します。

売り板に並ぶ売り指値注文のうち一番低いものは「0.24554」、買い板に並ぶ買い指値注文のうち一番高いものは「0.24550」となっています。
売り板と買い板の価格差は「0.00004」であることが分かりますね。
この場合に1,000USDT分の買いを成行注文で行った場合、最も有利な売買相手は0.24554となるため、0.24554で約定します。これが仮想通貨取引所のスプレッドとも言える部分です。
ですが、ここで知っておいてほしいのは、最も有利な売買相手である0.24554で約定できるのは、0.24554に入っている売り指値注文の取引量である1,224.70000USDTより少ない取引量である場合のみです。
例えば2,500USDT分の買いを成行注文で行ったとしましょう。しかし、売り板の中で最も有利な0.24554のレート帯には、2,500USDTすべてとマッチングできるだけの量の売り注文がありません。さてこの場合、2,500USDT分の買い成行注文はどこで約定するでしょうか?
買い手としては、当然一番安い価格で買いたいですよね。そのため、買い成行注文は、一番下にある売り指値注文から順番にマッチングされ、約定します。
価格 | 売り板 | 約定量(成行注文量-売り板) | 残り約定量 |
0.24554 | 1,224.70000 | 2,500-1,224.7=1,275.3 | 1,275.3 |
0.24555 | 784.04115 | 1,275.3-784.04115=491.25885 | 491.25885 |
0.24556 | 162.06960 | 491.25885-162.06960=329.18925 | 329.18925 |
0.24557 | 1,100.64474 | 329.18925-1,100.64474=-771.45549 | -771.45549 |
まず、0.24554でおよそ1,224USDT分の買い注文が約定します。合計の注文量は2,500USDTなので、1,224USDT分の買いが成立すると、約定していない分は残り1,275USDTになりました。
次に0.24555でおよそ784USDT分、0.24556でおよそ162USDT分の約定が成立し、約定していない注文数は329USDTとなりました。
そして最終的に2,500USDT分全ての注文が約定するのは、およそ1,100USDTの売り指値注文のある0.24557のレートとなり、本来約定したい価格との差が生じてしまいます。
自分の注文量が多ければ多いほど、また板に出されている指値注文が少なければ少ないほど、約定の価格差が生じます。
なぜこうした現象が起きるのかというと、取引相手が不足している、つまり流動性不足だからです。これを板が薄いと表現する事もあります。
仮想通貨は、FXと異なり、それぞれの取引所で取引する顧客の間で取引を行っています。そのため、抱えている顧客が多く、取引相手が豊富にいる取引所を使うほど、自分の希望するレートで約定できる可能性が高くなります。
この約定力の面からいうと、国内取引所であれば、ビットコインの取引量が国内No.1のbitFlyer(ビットフライヤー)、海外取引所であれば、大手のBinance(バイナンス)がおすすめです。