仮想通貨取引所の手数料には、「メイカー手数料」と「テイカー手数料」の2種類があります。
「メイカー手数料=指値注文の手数料」、「テイカー手数料=成行注文の手数料」というのがざっくりとしたイメージですが、指値注文でも必ずしもメイカー手数料にはならない場合もあります。
メイカー手数料・テイカー手数料を理解するには、仮想通貨取引所で採用されている板取引の仕組みを理解する必要があります。
この記事では、板取引の仕組みから各仮想通貨取引所の手数料設定まで詳しく解説します。
メイカー手数料・テイカー手数料とは?
指値注文のメイカー手数料の方が、成行注文のテイカー手数料よりも安く設定されています。その理由は、「板取引に流動性を生み出す」という、仮想通貨取引所にとってメリットのある行動をしているからです。
「流動性を提供してくれたことへの仮想通貨取引所からのお礼」と考えるとわかりやすいです。
指値注文とは、あらかじめ自分で指定した価格になった場合のみ約定する仕組みです。一方成行注文とは、約定価格は問わず、注文を約定させることを優先させる仕組みです。基本的に即時に約定します。
板取引に流動性を生み出すかどうかの違い
そもそも流動性とは何かということから説明します。「流動性」とは、簡単に言うと、「注文がすぐに約定しやすい状態」です。
「板取引」は利用者同士の取引で、「板」というのは、他の利用者が出した指値注文を表示しているものです。Binance(バイナンス)の板(オーダーブック)で見てみましょう。

このように、上側に売り指値注文、下側に買い指値注文が表示されます。
取引所取引は完全に利用者同士の取引なので、あらかじめ注文が入っている(その価格で売り買いすることを希望している人がいる)状態でないと、取引が成立しません。
例えば買い取引を希望している人から見ると、売り指値注文がたくさん入っているということは、取引相手がたくさんいて、自分の希望の価格ですぐに注文が約定させることができます。つまり流動性が高いということです。
一方、売り指値注文が少ないと、自分は買いたくても、なかなか売ってくれる人がでてこないので、希望の価格からずれたり、約定に時間がかかったりします。
指値注文を出して板に注文を並べると、他の利用者の注文が約定しやすくなり、仮想通貨取引所全体にとってメリットがあります。このため、メイカー手数料はテイカー手数料と比較して安く設定されています。
一方、成行注文は注文を出すとすぐに約定することを優先する注文方法なので、基本的にはすでに板に出されている指値注文とマッチングされます。
買い成行注文が出されると、それと対応した売り指値注文が、約定して板から消えるということですね。指値注文の場合とは逆に板から流動性を減らすことになるため、テイカー手数料は高く設定されています。
メイカー手数料は受け取り(報酬)になる場合も
一部の仮想通貨取引所では、メイカー手数料はマイナスに設定されています。つまり、指値注文が約定すると、メイカー手数料分を受け取れるということです。
主要な仮想通貨取引所では、Bybit(バイビット)がマイナスのメイカー手数料を採用しています。
主に海外取引所で使用される制度
メイカー手数料・テイカー手数料は、主に海外取引所で利用される制度です。
国内取引所でも、Coincheck(コインチェック)などはメイカー手数料・テイカー手数料の制度を採用していますが、サービスの一環で常時無料になっているため、実際には発生。しません。
メイカー手数料の注意点
手数料の安いメイカー手数料を使いたいと考える人は多いと思いますが、メイカー手数料にはいくつか注意が必要なことがあります。
必ずメイカー手数料にしたい場合は「ポストオンリー」を利用
指値注文を発注しても、必ずメイカー手数料が適用されるとは限りません。
メイカー手数料は、「流動性を提供してくれたことへの仮想通貨取引所からのお礼」で安くなっているので、板に注文が並べられなければ適用されません。その場合はテイカー手数料になってしまいます。
板に注文が並べられないとは、例えば売り指値注文を現在価格よりも低いレートで出してしまった場合です。
現在価格より低い価格で注文を出してしまった場合、指値注文として出したつもりでも、成行注文として即時約定してしまいます。そして、板に注文が並べられないので、メイカー手数料ではなくテイカー手数料が適用されます。
それを避けるために、仮想通貨取引所では、指値注文が板に並べられずに成行注文で執行されてしまう状況になった場合に注文をキャンセルする「ポストオンリー」機能があります。
ポストオンリー機能をONにしておくと、必ずメイカー手数料が適用されます。
約定しない場合がある
成行注文なら、すぐに約定しますが、板に注文を並べる場合は、必ず約定するとは限りません。その後価格がどんどん離れていってしまえば、ずっと約定しないというリスクもあります。
その場合、一旦指値注文を取り消して、約定できる価格で再度注文を出しなおさないといけなくなる場合もあります。
各仮想通貨取引所のメイカー手数料・テイカー手数料を比較
メイカー手数料とテイカー手数料の片方で取引することが多い人の場合、その注文方法の手数料が安い仮想通貨取引所を使うといいでしょう。
下記に代表的な仮想通貨取引所の手数料をまとめました。デリバティブ市場なのか、スポット市場なのかでも異なります。
スポット市場とは仮想通貨の現物を売買する市場です。一方デリバティブ市場は、仮想通貨取引所でよく見られる永久スワップ契約や無期限先物契約などのことです。デリバティブとは、金融派生商品といい、先物、オプション、スワップなどの取引を行う市場の総称です。
▶デリバティブ市場
仮想通貨取引所 | メイカー手数料 | テイカー手数料 |
Binance![]() |
0.02% | 0.04% |
Bybit![]() |
-0.025% | 0.075% |
![]() |
0.02% | 0.07% |
MEXC![]() |
0.03% | 0.075% |
![]() |
0.02% | 0.06% |
Gate.io![]() |
0% | 0.05% |
![]() |
0.03% | 0.07% |
▶スポット市場
仮想通貨取引所 | メイカー手数料 | テイカー手数料 |
Binance![]() |
0.1% | 0.1% |
Bybit![]() |
0% | 0.1% |
![]() |
0.1% | 0.1% |
Gate.io![]() |
0.2% | 0.2% |
![]() |
0.15% | 0.08% |
メイカー手数料・テイカー手数料を使いこなそう
メイカー手数料の方が安いので有利ですが、指値注文をすれば必ずメイカー手数料になるとは限らない、約定しないリスクがありなど、デメリットもあります。
メイカー手数料・テイカー手数料を正しく理解して使いこなしましょう。