仮想通貨

FXトレーダーが仮想通貨取引を始める際の注意点

2021年はさまざまな仮想通貨の急騰が話題になったため、投資対象として仮想通貨に興味を持ったFXトレーダーも多いのではないでしょうか。

しかし、資金調達率やメイカー手数料・テイカー手数料など、聞きなれない言葉も多く、仮想通貨取引所を利用するのをためらっている人もいるでしょう。

この記事では、FXトレーダーがスムーズに仮想通貨取引を始めることができるように、FXとの違いや注意点、仮想通貨取引の基礎知識を紹介して行きます。

らっこ
らっこ
似ているところもあるけど、違うところも多いよ!

国内取引所と海外取引所の違い

仮想通貨取引所には、bitFlyer(ビットフライヤー)やCoincheck(コインチェック)などの国内取引所と、Binance(バイナンス)やBybit(バイビット)などの海外取引所があり、それぞれメリット・デメリットが異なります。

仮想通貨を始める際には、どちらの取引所を使うか選ぶところからはじめましょう。

メリット・デメリットの違い

国内取引所のメリットは、日本の金融庁の規制を受けていることです。日本の規制は世界各国と比較しても厳しいため、逆に言えば、利用者がしっかりと守られているということになります。

一方で、海外取引所のメリットは、さまざまな銘柄を取り扱っており、スプレッドや手数料などの取引コストが安い点です。

国内取引所は、取り扱い仮想通貨が15種類程度のことが多く、しかも取引所取引ができる銘柄が少ないので、本格的に仮想通貨取引をする場合は、海外取引所の方がおすすめです。

しかし、日本の金融庁の規制という安心がほしい方は、国内取引所で取引できる銘柄に限定して取引を行うという方法もあります。

たぬき
たぬき
重視するポイントは人それぞれだよ!

国内取引所の中で取り扱い銘柄が多いのはCoincheck(コインチェック)です。

【コインチェック】取扱い仮想通貨数No.1! メリット・デメリットを紹介コインチェック(Coincheck)は取扱い仮想通貨数が№1の国内仮想通貨取引所です。取引所・販売所の2種類があります。Coincheckでんきやガスといったインフラ系のサービスも展開しているという特色があり、仮想通貨を支払いに使うことができます。...

本人確認(KYC)の違い

海外の仮想通貨取引所はFX業者と違い、一定額までの出金であれば本人確認(KYC)を不要としているところがほとんどです。これは海外取引所ならではの大きなメリットで、面倒な手続きは不要であるため、口座開設後に仮想通貨を送金すればすぐに取引を開始することが出来ます。

一方で、日本の仮想通貨取引所では、すぐに口座を開設することはできません。国内取引所では、口座開設申し込み後に、登録住所へ転送不要書留郵便が郵送されます。このはがきを受け取り、やっと取引を開始出来るようになります。

らっこ
らっこ
1週間以上かかることも想定しておこう

海外FX業者ではKYCを必須としている所がほとんどなため、仮想通貨取引所はたったこれだけで取引開始できるの…?と思われるでしょう。

ましてや多額の資金を預け入れるわけですから、不安になる気持ちも分かります。しかし、セキュリティの面では海外取引所も決して緩いわけではありません。二段階認証をしっかりと行い、パスワードの流出にさえ気を付けていれば、安全に利用できます。

二段階認証とは、IDとパスワードを入力した後に、さらに認証が必要となる方式のことです。仮想通貨取引所やFX業者では、スマートフォンやPCアドレスにコードが送信され、ログインするにはそのコードを入力する必要がある方法が採用されていることが多いです。本人しか閲覧できないスマートフォンやPCアドレスを経由することで、セキュリティレベルが大幅に高まります。

海外取引所を利用する際に注意するべきなのは、フィッシングサイトです。取引所そっくりなサイトを作り、メールアドレスとパスワードを盗み取る手口が横行しています。

これでも二段階認証さえしていれば不正に送金される事は少ないのですが、同じメールアドレスとパスワードに設定している取引所へは、手当たり次第に不正ログインを試みてきます(体験済)。

フィッシング詐欺対策としては、公式ページをブックマークしてそこからログインすること、不用意に英語のメール開かないことである程度は対策出来ますね。

取引所・販売所などの違い

仮想通貨取引所には、いくつかの取引形態があります。国内取引所であれば、取引所・販売所・仮想通貨FX・先物、海外取引所であれば、現物取引・無期限先物・期限付き先物などです。

国内取引所の取引形態

販売所 仮想通貨取引所を相手とした取引(相対取引)
取引所 利用者同士の取引(取引所取引)
仮想通貨FX 買いに対しては売り、売りに対しては買いを必ずセットで行い、差額のみを受け取る差金決済取引(レバレッジ対応)
先物 決められた期日までに売買することを約束する取引

販売所と取引所の違いは、販売所は取引コストが高く、取引所は安いということです。仮想通貨FXは、現物を保有しないという特徴があります。FXトレーダーなら理解しやすいでしょう。

先物は特殊で、国内取引所ではあまり取り扱われていません。bitFlyer(ビットフライヤー)が、ビットコイン(BTC)のみ先物サービスを提供しているくらいです。

【bitFlyer】国内No.1のビットコイン取引量! メリット・デメリットを徹底解説bitFlyer(ビットフライヤー)は国内でも№1のビットコイン取引量がある仮想通貨取引所です。人気の仮想通貨13種類から選んで売買ができるので多くの人が利用しています。この記事では、ビットフライヤーのメリット・デメリットを徹底解説します。...

海外取引所の取引形態

現物 利用者同士の取引(取引所取引)
無期限先物 引き渡し期日の決まっていない先物。FXと似た仕組み。
期限付き先物 決められた期日までに売買することを約束する取引。
レバレッジトークン 先物取引の2倍、3倍等の値動きをするように設計されたトークンを売買する取引

海外取引所には、国内取引所の「販売所」にあたるサービスはなく、基本的に利用者同士の取引である取引所取引です。板取引が行われます。

ただし、本人確認(KYC)を済ませれば、クレジットカードで仮想通貨を購入することはできます。

また、無期限先物と期限付き先物があるのも特徴です。無期限先物は、通常の先物と異なり、期限が来たら決済しなければならない制度がないため、無期限にポジションを保有することができます。

たぬき
たぬき
国内取引所の仮想通貨FX(暗号資産FX)と似たサービスだね!

また、レバレッジトークンなどの国内取引所にはないサービスもあります。海外取引所のデリバティブ取引についてはこの記事にまとめました。

デリバティブ
【海外取引所の使い方】デリバティブ取引とは?種類や仕組みを解説仮想通貨取引所では、現物取引(スポット取引)以外にも、無期限先物や四半期先物、レバレッジトークン等のデリバティブ取引を行うことができます。デリバティブ取引では、レバレッジなど現物取引よりもややこしい面もあります。この記事では、デリバティブ取引の経験がない人向けに、注意点などをまとめて解説します。...

海外取引所を利用する際に注意すること

国内取引所は使い方が比較的シンプルですが、海外取引所では、覚えておくべきことが多いです。ここでは、特に海外取引所を利用する際に注意することをまとめました。

使い始めるまでのハードルがやや高い海外取引所ですが、仮想通貨を保有するだけできるステーキングやマスターノード、仮想通貨が無料でもらえるエアドロップなど、トレーダーにとって嬉しいサービスがたくさんあり、海外FXとはまた違った戦略を取って資金を増やすことが出来ます。

ステーキングとは、保有している仮想通貨のネットワークに参加することで報酬を得る仕組みの事です。保有することで追加利益を得られる仕組みとしては、他にもマスターノードやNEMのハーベストがありますが、ステーキングはマスターノードやハーベストと比較すると、通貨の必要最低保有量が低く気軽に始められるケースが多いです。

KYCの段階によってできることが異なる

海外取引所では、基本的に本人確認(KYC)なしで利用することができます。しかし、KYCなしの場合、1日の出金限度額が制限されたり、IEO(新規取引所公開)に参加できなかったりなど、いくつかの制限があります。

KYCを行うと、以下のメリットがあります。

一日の出金可能額が増える

クレジットカード入金が可能

IEO(新規取引所公開)に参加可能

KYCの段階ごとの制限は、下記の記事にまとめています。

【海外取引所の使い方】本人確認(KYC)なしでも使える! KYCするメリットは?海外取引所は、基本的に本人確認(KYC)なしで使用することができますが、KYCを済ませると、1日の出金可能額が増える、クレジットカード入金が可能、IEO(新規取引所公開)に参加できるといったメリットもがります。口座開設と同時にKYCを済ませておくのがおすすめです。...

二段階認証は必須!

仮想通貨取引所で最も恐ろしいことは不正ログインからの資金流出です。あらかじめ二段階認証を設定しておくことで、その多くを未然に防ぐことができます。

必ず二段階認証を設定しておきましょう。

Binance(バイナンス)では、スマホに認証コードが送られます。

Binanceセキュリティ認証

日本人は入金方法が限られる

海外取引所では、日本から入金できる方法が限られています。

例えばBinance(バイナンス)では、下記の3種類の入金方法を用意していますが、日本人は銀行送金による入金を利用できないため、仮想通貨の送金か、クレジットカード入金を使用することになります。

・銀行送金(日本人不可)

・クレジットカード

・仮想通貨送金

この仮想通貨送金に便利なのが、国内取引所です。国内取引所に銀行入金を行い、その取引所で仮想通貨を購入し、海外取引所に送金する方法を使えば、低コストで送金を行えます。

詳しい手順はこちらの記事で解説しています。

【海外取引所の使い方】国内取引所から海外取引所に仮想通貨を送金する方法海外取引所を利用するためには、まず仮想通貨で入金を行う必要があります。クレジットカード入金もありますが、コストが低くおすすめなのは、国内取引所から送金を行う方法です。この記事では、bitFlyerからBinanceへの送金方法を図解します。...

メイカー手数料・テイカー手数料がある

海外取引所には、メイカー手数料とテイカー手数料が別に設定されています。

メイカー 主に指値注文のことです。取引板に指値注文を出し、取引所に流動性を作る(make)ことからメイカーと言います。
テイカー 主に成行注文のことです。取引板に並んだ注文を成行約定で取り除く(take)ことからテイカーと言います。

ざっくりと、メイカー手数料=指値注文の手数料、テイカー手数料=成行注文の手数料と考えることができますが、例外もあります。

一般的に、メイカー手数料の方がテイカー手数料より安く設定されており、Bybit(バイビット)などは、メイカー手数料をマイナスに設定しています。つまり、取引するたびに手数料を受け取れるということです。

らっこ
らっこ
メイカー手数料はお得だね!

詳しくは、こちらの記事で紹介しています。

【仮想通貨基礎知識】メイカー手数料・テイカー手数料とは? 報酬になる場合も仮想通貨取引所の手数料には、「メイカー手数料」と「テイカー手数料」の2種類があります。「メイカー手数料=指値注文の手数料」、「テイカー手数料=成行注文の手数料」というのがざっくりとしたイメージですが、指値注文でも必ずしもメイカー手数料にはならない場合もあります。この記事では、メイカー手数料・テイカー手数料の仕組みを解説します。...

資金調達率がある

海外取引所では、FXのように取引できる「無期限先物取引」が人気ですが、この取引にはスワップポイントのように特定の時刻に一定額が支払い(または受け取り)となる「資金調達率」の制度があります。

無期限先物取引は、現物取引と異なり、買いポジションと売りポジションの差額を受け取ることを目的とした取引です。通常将来のある特定の期日に現物の受け渡しを行う先物取引を無期限化したものなので、FXのようにトレードすることが可能になります。

資金調達率の特徴には、このような特徴があります。

・売りポジションと買いポジションでマイナスになる側が変わることもある

・時間おきに発生する

詳しくは、こちらの記事で紹介しています。

【仮想通貨基礎知識】資金調達率とは? FXのスワップポイントとの違いも解説資金調達率とは、FXのスワップポイントと似たような仕組みで、仮想通貨の取引形態のうち、無期限先物取引のポジションを保有していると発生します。8時間おきに発生する仮想通貨取引所が多いです。この記事では、スワップポイントとの違いも含め資金調達率について詳しく解説します。...

レバレッジの仕組みが異なる

仮想通貨取引所の無期限先物取引では、海外FX業者で行える仮想通貨FX(暗号資産FX)と同じような感覚で仮想通貨の差金決済取引(買いポジションと売りポジションの差額を利益とする)が行えます。

しかし、レバレッジの仕組みや、ロスカットまでの猶予を示す「マージン率」などはかなり異なるので注意が必要です。仮想通貨取引所のレバレッジの仕組みについては、この記事で解説しています。

レバレッジ
【海外取引所の使い方】レバレッジはどう計算する?維持証拠金を理解しよう仮想通貨取引所のデリバティブ取引でレバレッジをかける場合は、当初証拠金(必要証拠金)と維持証拠金という二つの計算方法が存在します。特に重要なのは維持証拠金で、口座の資金が維持証拠金を下回るとロスカットが発動します。この記事では、仮想通貨取引所のレバレッジについてまとめました。...

海外取引所で取引をする具体的手順

まずは資金移動をしよう

海外取引所では、現物ウォレット、スポット取引用、先物取引用ウォレットと分けられているケースが多く、仮想通貨を取引所に送金したら資金を割り振らなければなりません。

今回はBinance(バイナンス)のデリバティブ取引で最もポピュラーなUSDⓢ-M先物(無期限先物)に資金移動する方法を説明します。

まずはウォレット画面より「振替」を選択します。

Binanceの資金移動

上部に「フィアットと現物」を、下部に「USDⓢ-M」を選択し、資金移動したい通貨と数量を選択した後、「確認」をクリックすると完了です。

仮想通貨取引所は板取引

仮想通貨の場合、FXと大きく異なるポイントのひとつとして、板取引であることが挙げられます。板取引の商品としては、仮想通貨の他に株、先物などもありますね。

海外取引所の板取引はスプレッドがほとんどない事から、スプレッドのあるFXに慣れた人にとっては嬉しい取引環境でしょう。

板取引であるため値動きのクセもまたFXとは違うものとなり、ティックの動きは為替と比較するとマイルドです。また、注文数が大きくなると、スリッページが起こりやすいことも仮想通貨の板取引の特徴です。

たぬき
たぬき
スリッページが起きそうかどうかも板で確認できるよ!

板取引は、参加者の心理が見えやすいのも特徴です。リアルタイムに世界中の取引板を自由に見ることができるため、見せ板のような心理戦も行われます。

【仮想通貨初心者必見】板取引って何? 板の見方を詳しく解説仮想通貨の取引所取引は、「板」を基準に約定価格が決まります。約定のレートが希望レートとはずれてしまうことも発生しますが、板の見方がわかっていれば、どれだけずれるかおよその予測をつけることができます。この記事では、板の見方を詳しく解説します。...

注文パネルを使いこなそう

仮想通貨取引所の注文パネルは、海外FXで使われるMT4/MT5とは全く違った注文パネルであるため、始めは困惑する方も多いでしょう。Binance(バイナンス)の注文パネルを使って基本的な機能の説明をして行きたいと思います。

Binanceの注文パネル
①リミット 指値注文のことです。仮想通貨取引所では成行注文よりも指値注文の方がコストを抑えられるため(メイカー手数料)、出来るだけリミット注文で売買を行いたいですね。
②マーケット 成行注文のことです。指値注文の倍近い取引手数料がかかることもあるため注意が必要です(テイカー手数料)。
③ストップリミット MT5から採用されたストップリミット注文と同じです。ストップ価格とリミット価格の2つを設定し、ある価格(ストップ価格)に達したら、リミット価格に指値注文が入ります。
④価格 リミット注文で注文を行いたい価格を入力して使用します。成行注文のときは「マーケット」と表示されます。
⑤合計額 注文を行いたい数量を入力します。画像ではUSDT表記となっていますが、BTCやETHなど、取引を行う通貨表記への変更も可能です。
⑥TP/SL ポジションを建てる前にあらかじめ利確指値と損切り逆指値を決めて同時に注文を行うことができます。
⑦削減のみ 持っている建玉のみ対象にします。利確、損切りに限定した注文を行います。

取引所により微妙に異なる部分こそありますが、Binanceで基本的な使い方さえマスターしてしまえばほとんどの取引所も直感的に使用することができるでしょう。

まとめ

仮想通貨取引は海外FXと違って自由度の高い運用が可能です。特に、日頃からニュースや要人発言を追っているような、情報感度の高いFXトレーダーには向いているのではないでしょうか。

また、インカムゲインを得る手段として活用するのもひとつの投資戦略です。ステーキングやレンディングを行い、余剰資金を寝かせておくよりは…といったような活用方法もありますね。

まだまだ黎明期の仮想通貨です。少しずつ認知されてきてはいますが、FCA(英国金融行動監視機構)やSEC(米証券取引委員会)等では規制の動きも強まり、国際通貨と呼ぶ日は遠いのかも知れません。

しかし、年々進むインフレ傾向から資産を守るには、希薄価値によって長期上昇トレンドを形成しているBTCのような物を保有しておくべきなのかもしれませんね。ポートフォリオの隅っこにBTCを置いておくだけで、いつか助けられる日が来るのかもしれません。